大岡昇平bot

大岡昇平が私たちに教えてくれること

大岡昇平「野火」

 この田舎にも朝夕配られて来る新聞紙の報道は、私の最も欲しないこと、つまり戦争をさせようとしているらしい。現代の戦争を操る少数の紳士諸君は、それが利益なのだから別として、再び彼らに欺されたいらしい人たちを私は理解できない。おそらく彼らは私が比島の山中で遭ったような目に遭うほかはあるまい。その時彼らは思い知るであろう。戦争を知らない人間は、半分は子供である。