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大岡昇平が私たちに教えてくれること

2023-10-01から1ヶ月間の記事一覧

大岡昇平『年初に豊かさを考える』 新人類、ポストモダン、などと浮かれている消費人口ほど御しやすいものはない。長年の政権保持によって老人化した政府による、幼児化した中流階級の支配である。豊かさは保守性を持っている。それは豊かでないものを差別し…

大岡昇平「詩人」 中原が自作の朗誦がうまかったのは、草野心平がいまだに語り草にしている。猥談だって独特のものだった。しかし彼が女に持てるところは、われわれは一度も見たことはない。 渋谷の洋食屋の女給一人口説くのにも、阿部六郎や僕を動員して、…

大岡昇平『俘虜記』 下士官は既に軍隊内のその位置に快適を感じ、自己の個人的幸福のためにも、この組織を支持する意識を持ったエゴイストである。彼らは特権によって誘惑された者どもであり、特権ある者は常に堕落するのである。

大岡昇平「野火』 名状しがたいものが私を駆っていた。行く手に死と惨禍のほか何もないのは、すでに明らかであったが、熱帯の野の人知れぬ一隅で死に絶えるまでも、最後の息を引き取るその瞬間まで、私自身の孤独と絶望を見究めようという、暗い好奇心かも知…