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大岡昇平が私たちに教えてくれること

2023-09-01から1ヶ月間の記事一覧

大岡昇平『中原中也の思い出』 彼は彼の詩が人を動かすだけではなく、彼という人間が人に認められることを欲した。彼の伝説的毒舌、無限の喧嘩は主としてこの希望が、そう簡単には実現されなかったため起ったものである。 彼は彼の考えていたバルザックと共…

大岡昇平「新帰朝者」 粧われた心だけが、粧われたものに感服する、とむかし小林秀雄が言ったが、堀の作品と高級ミーハーの間の関係は、その標本みたいなものである。

大岡昇平「野火」 この田舎にも朝夕配られて来る新聞紙の報道は、私の最も欲しないこと、つまり戦争をさせようとしているらしい。現代の戦争を操る少数の紳士諸君は、それが利益なのだから別として、再び彼らに欺されたいらしい人たちを私は理解できない。お…

毒親育ちなので精神の力を使って生きてきました

大岡昇平『再会』 しかし私は文学には関係なくとも、神戸で会社員として六年、兵隊俘虜として二年、精神の力を使って来ている。使わなければ食うことが出来ず、或いは死ぬ危険があったからだ。その間私の中に蓄積した精神の習慣が、もし働き得るものであれば…

大岡昇平『狡猾になろう』 言葉の結合による面倒な思考から逃避しキャッチ・フレーズにキャッチされ、集団にとけこむ快楽を見出そうとする。これは戦前、国民大衆を軍部の望むままに操るために、マス・メディアが文化官僚と共謀して行った手段であり、東西緊…

大岡昇平「幼年」 昭和十年頃、小林秀雄が「故郷を失った文学」を書き、東京には故郷というようなものがなくなっていることを指摘した。たしかに美しい山や水に囲まれた環境は、大正十二年の大震災以後の東京にはなくなった。小林の論文はそういう東京の変貌…