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大岡昇平が私たちに教えてくれること

2022-03-01から1ヶ月間の記事一覧

大岡昇平『再会』 しかし経験とは、そもそも「書く」に価するだろうか。この身で経験したからといって、私がすべてを知っているとは限らない。経験したため、却って見えなくなったことも、多々あるはずである。帰還以来日本の現実が、いかに私に見えにくいこ…

大岡昇平『記録文学について』 戦争は厳粛な事実であります。日本はもう自ら戦うことはありますまいが、それだけに国際関係の微妙な一環として、国の存立をかけなければならない我々にとって、国家組織の最高の表現である戦争について盲目であることは許され…

大岡昇平『新聞記者の実話物』 取材の対象に対する態度が、多く安直なお涙頂戴的同情に終始しているのはいかがなものであろうか。(略)現代の社会的関心の退化の一徴候として、それ自身はあまり感心すべき傾向ではない。

大岡昇平『嚙みつき帳』 彼の政策といえば、アメリカのいうなりになるということだけである。グラマンでなければロッキードを買い、自衛隊を増強して、旦那のお望みなら、太平洋水域のどこにでも「戦力」を派遣出来るよう、条約改定をやってのけようという、…

大岡昇平『「象徴」を追う現代文学』 野間宏の晦渋な反省、安部のアレゴリイ、三島の美学的自然描写などが、個物の相から本質をつかみ出す忍耐を失った部分において、安直な繰り返しになっているのは事実である。 一方批評家もこれらの作品の「象徴的」に暗…

大岡昇平『戦争』 一度大きな軍事予算を組んでしまうと、拡大した設備は使わないと損になりますから、どんどんふくれ上がっていくでしょう。二・二六事件の時、軍事予算を出ししぶった高橋蔵相が殺されたんだけど、その次の蔵相が軍部の要求をのんで予算を大…

大岡昇平『俘虜記』 私の体は強健ではなかつたが、病に対して比較的抵抗力があるのを知つてゐた。私は細心に自分の症状を観察し、療法を自分で工夫した。熱のためすぐ下痢が始まつたのを見て、消化器に無益な負担をかけないために(これがその時の私の考へで…