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大岡昇平が私たちに教えてくれること

2024-02-01から1ヶ月間の記事一覧

大岡昇平『成城だより』作家の日記1957年11月13日 1930年代の爆撃機の発達は、やはり戦争を不可能にするだろうといわれていた。開戦後48時間以内に、交戦国の基地、工場は破壊されるということだった。しかしそんなことがちっとも起らなかったため、どんなひ…

大岡昇平「事件」 宮内辰造は少し小説などを読んでいたのかも知れない。場面の描写はなかなか堂に入ったものである。あるいは岡部検事と話しているうちに、次第に場面を小説的に作り上げて行ったのかも知れない。 供述というものは、実は小説に近いのである…

法律の文章が長くて複雑な理由

大岡昇平「事件」 大抵の起訴状は切れ目なしの一文であるが、それは末尾に示される犯罪事実が、一連の状況、動機、故意のひとつの結果であることを示すためである。主語があいまいであろうとなかろうと、罪となるべき事実がそこに明らかに示されていれば、そ…

大岡昇平「野火』 名状しがたいものが私を駆っていた。行く手に死と惨禍のほか何もないのは、すでに明らかであったが、熱帯の野の人知れぬ一隅で死に絶えるまでも、最後の息を引き取るその瞬間まで、私自身の孤独と絶望を見究めようという、暗い好奇心かも知…