大岡昇平bot

大岡昇平が私たちに教えてくれること

毒親育ちなので精神の力を使って生きてきました

大岡昇平『再会』

 しかし私は文学には関係なくとも、神戸で会社員として六年、兵隊俘虜として二年、精神の力を使って来ている。使わなければ食うことが出来ず、或いは死ぬ危険があったからだ。その間私の中に蓄積した精神の習慣が、もし働き得るものであれば、銀座の住人たるC子が突然料理がうまくなったように、私も私の「従軍記」を「うまく」書くことも出来るかも知れないと、虫のいいことを考えた。