大岡昇平bot

大岡昇平が私たちに教えてくれること

大岡昇平『再会』

 人いきれの中で私の精神は勝手に動いていた。私に果して「従軍記」が書けるだろうか、とばかり考えていた。いくらX先生におだてられても、私は自ら顧みて自分に才能のかけらも見出すことは出来ない。青春の十年を無為に過ごし得たということ自体、私に文学的才能のない決定的な証拠である。