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大岡昇平が私たちに教えてくれること

大岡昇平「詩人」

 中原が自作の朗誦がうまかったのは、草野心平がいまだに語り草にしている。猥談だって独特のものだった。しかし彼が女に持てるところは、われわれは一度も見たことはない。

 渋谷の洋食屋の女給一人口説くのにも、阿部六郎や僕を動員して、十何度飲みに通った揚句、ふられている。女にどうも男があるらしいとか、「旅行しないか」と言ったら、女がどんなにどきんとした顔をしたとか、中原の描写は微に入り細を穿っていたが、ふられたことにかわりはない。