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大岡昇平が私たちに教えてくれること

大岡昇平『成城だより 付 作家の日記』

 夕刊で「二俣事件」無罪確定の報を読む。「八海事件」といい、この事件といい、昭和二十五、六年頃の日本の裁判はどうかしていた。最高裁が盛んに差戻しをやるのはいい傾向だが、気になることが一つある、被告の数からいっても、政治的背景からいっても、問題なく大きい「松川事件」だ。小さな虫を助けて、大きな虫を殺すつもりでないか、という予感がないでもない。