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大岡昇平が私たちに教えてくれること

大岡昇平『文学と郷土』

今日のように交通が発達してくると、今まで隔たっていた都会と地方との距離も縮まってきます。しかしここに観光というものが介在する場合、相互に正しい姿を認めあう機会が失われてしまうのではないかと私はおそれます。今日の観光客は「金をばらまいて歩く浮浪人」といわれますが、都会の人が地方に来る時は、どうしても観光的な見方になってしまう。地方の人から見ると、お金が落ちるために、安直な観光的な見方に迎合するように自分をゆがめて見せてしまう。これが一番恐しいことだと思います。

 ですから、都会と地方との結びつきというものは、もっと文化的な、相互に認識を深めるような道を、見つけていかなければならないのではないかと思います。