2022-05-13 ■ 大岡昇平『作家の日記』 犯罪型の人間がいるように自殺型の人間というものもいるもので、ほとんど生得といってもよい。しかしそれが実行に移されるかどうかは、大抵偶然の事件の組み合わせにかかっている。新聞や週刊誌が誇大に扱わないのが望ましい。 (略) 僕が自殺型であるのは自分で知っている。十八歳の頃は、人生はたしかに生きるに値しないと確信し、自分を生んでくれた両親を怨んでいた。 しかし半年ばかり自殺のことばかり考えていたのは、丁度芥川龍之介が自殺して、新聞雑誌に記事が出通しだったからである。