大岡昇平bot

大岡昇平が私たちに教えてくれること

大岡昇平『僕の読書法 ⑶』

 傑作といふのは何等かの形で著者の全精神が現はれてゐるもので、それは二遍や三遍読んだくらゐではとてもわかるものではないと信じます。自分の気に入つた本は、飽きるまで何度でも読むこと。これはその本のみならず著者の全精神を自分の糧とするといふ意味で、必要な方法ではないかと思はれます。

 次に或る著者が気に入つたら、その著者の全集を読むことも大切です。著者といふ一個の人間に触れるのが、真にその本を理解する道であるといふ見地からすれば、これは一作品を再読することと同じく、重要なことだらうと思はれます。