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大岡昇平が私たちに教えてくれること

2023-01-01から1年間の記事一覧

大岡昇平『文学と郷土』 今日のように交通が発達してくると、今まで隔たっていた都会と地方との距離も縮まってきます。しかしここに観光というものが介在する場合、相互に正しい姿を認めあう機会が失われてしまうのではないかと私はおそれます。今日の観光客…

大岡昇平『人間差別がたどる運命』 社会の情報化がすすむにつれて言論の果す役割は大きく、体制側にとって統制が必要になって来る。戦時中と同じように御用学者がまた発生する。彼らは論理ではなく、ただことばを飾るだけの修辞学によって管理社会を弁護する…

大岡昇平『戦争』あとがき 「国難」「非常事態」など状況の概念化、情報操作の組織化の現状にあっては、なにか事があればひどい目に合うのはまたもやわれわれ国民ではないか。

大岡昇平『人間差別がたどる運命』 社会の情報化がすすむにつれて言論の果す役割は大きく、体制側にとって統制が必要になって来る。戦時中と同じように御用学者がまた発生する。彼らは論理ではなく、ただことばを飾るだけの修辞学によって管理社会を弁護する…

大岡昇平「成城だより」 事件は支配者の好むことしか伝わらない。

大岡昇平『遺稿(ひとむかし集)』 次の原発事故は、日本かフランスだろうといわれている。ところが日本は電気も余っているが、銭も余っているので、世界で原発を増設しようとしている唯一の国だそうだ。出力調整なんて数やっていれば、確率的にリスクは大き…

大岡昇平『俘虜記』 私は既に日本の勝利を信じていなかった。私は祖国をこんな絶望的な戦に引きずりこんだ軍部を憎んでいたが、私がこれまで彼等を阻止すべく何事も賭さなかった以上、彼等によって与えられた運命に抗議する権利はないと思われた。

大岡昇平『私の読書法』 しかしその頃私は小説を楽しみだけのために読んでいたのではありません。これから入って行く、大人の世界がどういうものであるか。人生とは何か、を知ろうとして、読んでいたのです。近代文学はただ面白おかしくスリルに富んでいる、…

大岡昇平『再会』 ただ私は「書く」ことによってでもなんでも、知らねばならぬ。知らねば、経験は悪夢のように、いつまでも私に憑いて廻る公算大である。

大岡昇平『俘虜記』 アメリカの美人達はいずれも人に見せる顔をしていた。或る美人は眉を大きく釣り上げて無意味な放心を示し、別の美人は口角を小さく釣り上げて無意味な笑いを浮かべていた(こういう見せるための顔面筋肉の運動が、すべて上方に向かってい…

大岡昇平『成城だより 付 作家の日記』 夕刊で「二俣事件」無罪確定の報を読む。「八海事件」といい、この事件といい、昭和二十五、六年頃の日本の裁判はどうかしていた。最高裁が盛んに差戻しをやるのはいい傾向だが、気になることが一つある、被告の数から…

大岡昇平「歴史・人間・文学」 いまの読書には、ダイジェストで読むという要素が入っていますからね。漱石も鴎外も、古典としてよく読まれているようですけれども、教科書で一部を読んで、文庫本で1冊か2冊読む、あとは読まなくなってしまうというのが実情…

大岡昇平『狡猾になろう』 人がそのおかれている社会的条件を知ろうとする意志を失う時は、最も煽動に乗り易い時である。

大岡昇平『少年』 私はこんな文章を書いているため、この頃渋谷のもと住んでいたあたりを歩く機会が多いのだが、木も家もすっかり変わっているのに、道はその勾配や曲り方まで、昔のままなのに、少し驚いている。都市ではすべては変るが、変らないのが土なの…