2024-09-01から1ヶ月間の記事一覧
大岡昇平『成城だより』 いっしょに芝居をしたことあり、富永次郎、Kに惚れてしまった。貰った手紙を見込があるか、と鑑定を頼まれたことあり。「髪をすいていると、だんだん緑色に光って来て、気が静まって来ます」とあり。「この女は、ちょっと気をつけろ…
大岡昇平『文学表現の特質』 作家の性格、記憶、志向、経験、要するにその生活史のすべてが、彼の文体を形づくるのである。それは他人はもちろん、当人も、厳密にいえば、変えようのないものである。しかし作品はもちろん文体だけから成り立っているものでは…
大岡昇平『文学の可能性』 まず小説が人間の願望の物語による実現である、という前提から出発したい。(略) わが国におけるそのはじまりを(略)一応『源氏物語』あたりにおくとすると、すぐほかの書かれたもの(詩、論文)にはない、一つの作用が認められ…
大岡昇平「悲しい老人」 実は私は去る11日、新宿に出て、下りの階段を踏みはずし、腰骨を打ち、以来十日間、寝たきりになった。食事もベッドで取ることが多くなり、それだけ老妻に世話をかけることが多かったので、看病疲れの老女の自殺にショックを受けたら…