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大岡昇平が私たちに教えてくれること

 大岡昇平『作家に聴く』

 昭和九年国民新聞社に入った。はじめ学芸部にいたが、まもなく社会部に移った。これもスタンダールの影響だ。彼の作品や生涯を読んでみると、いろんな経験をしている。考え方も、狭い文学の世界だけにちぢこまっていないで、商人にもなれば、軍人にもなっている。新聞記者になって、正確な報道文章を書くことを学んで、ジード以来のソフィストケーションから、脱出しようとしたのだが、現実に入ってみると、新聞記事の要領は事実を誇張することにあるのがわかって、一年ばかりでよした。